Chapter 02
ブランディングパラダイム
Branding Paradigm

アウディ

Audi

世界トップへのブランディング・リーダーシップ

Pictures from WorldBranding

アウディは、中長期経営計画においてブランディングを重要な戦略課題として位置づけ、まずはフォルクスワーゲンとの差異化がブランドポテンシャルを高めるという仮説のもと、高級車セグメントへのリポジショニングに着手し成功。次に、自らの資源を改めて分析し世界トップを目指す。「先頭を切る」という新しいミッションのもと、きめ細かな1,000以上のプロジェクトと80ヶ国を網羅するブランドマネジメントシステムが業界のリーダーシップを生もうとしている。

a.

Branding Idea

すべてにわたるブランドと外観の統一

ブランディングを総合的に理解し、先鋭的な理念を持つ自動車メーカーと、メタデザインのような企業アイデンティティのコンサルタントが手を組むと、何が起きるのか。アウディのサクセスストーリーには、それがみごとに体現されている。長年のパートナーである両者は、ブランドマネジメントを経営戦略のプロセスと位置づけ、実施においてもこの文脈に従う。ブランドイメージは、企業、その製品、そして神話の、三つの相互作用から生まれる。アウディは昔からこの原理を認識してきた。創立以来、従業員は先鋭的に考え、行動し、競争の中で頭角をあらわすことを喜びとしてきた。この思想が、同社の製品とブランドをかたちづくっている。

Vorsprung durch Technik(技術による先進):高級車セグメントへの進出

アウディは1990年代半ば、フォルクスワーゲンとの明確な差別化がそのブランドポテンシャルを大きく引き上げるとの認識に基づいて、ポジショニングを見直した。新しい顧客層の獲得を期待して、新しい商品の投入が行われた。最高所得層の顧客に照準を合わせて、A8などのモデルがつくられた。メタデザインは、アウディの新しいポジショニングを視覚的に伝える役割を担った。新しいコーポレートデザイン計画と、コミュニケーションメディアのコンテンツおよびトーンを通して、アウディとメタデザインは時宜に合った効果的なブランドバリュー「人間性、優越、先見性、情熱」を発信した。「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」というブランドスローガンに、新しい次元が与えられた。

アウディ
企業
アウディ
商品
アウディ
企業

店頭から公式ウェブサイトまで、ビジュアルアイデンティティの一貫性が打ち出された。この作業が、企業イメージ転換への布石となった。その後の数年間にわたり、明確なイメージ戦略と、これに波長の合った商品づくりによって、アウディは高級乗用車市場においてその地位を不動のものとしていった。

“Taking The Lead(先頭を切る)”:未来へ向けてブランドの焦点を絞る

アウディはその後も引き続き、自社ブランドの位置づけとポテンシャルの分析を行った。アウディはその商品と同様、ブランドにおいてもまた、勝利の美酒に酔うことなく、引き続き新しい目標にむけてねらいを定めていった。高級車セグメントでトップの座を獲得したアウディがねらう次なる目標は、世界のトップだった。同社はまず、競合他社との差別化をきわだたせるために、2003年にブランドバリューの再定義を行った。前述の2つのミッションステートメント(商品とブランドそれぞれのミッション)にもとづいて、アウディはブランドミッションをひとつに絞って明確に定義し、これに「スポーティ・先進性・固有価値」の3つのバリューを持たせた。この新しいポジショニングをもって実行に移されるミッションとは:“Taking The Lead(先頭を切る)”。であった。アウディに乗るドライバーはいまや、アウディ製品にこうしたリーダーシップを自然と期待するようになってきた。彼らにとっては、これこそがアウディというブランドの意味するものだ。ブランドのマネジメントと適用もまた、ブランドそのものと同じく先進的な手法によって行われる。このブランドの精神にのっとって、アウディが今後にむけて掲げる全体目標は、高級乗用車ブランドの国際市場において「先頭を切る」ことである。

アウディの主たるコーポレートデザインエージェントとして、メタデザインはこの戦略的プロセスに対してコンセプトおよびクリエイティブ面の支援を行い、1,000件を超える個別プロジェクトを手がけてきた。ブランドの深い理解にもとづいた数々の独自アイデアは、ひとつの推進力となってきた。その仕事にはアウディというブランドの実態が、的確に反映されている。

アウディ

成果

  • 01
    高級車市場における恒久的なブランド構築。
  • 02
    2005年のイメージ調査において、アウディは第1位に返り咲き*、「先進性(主導力)」「品質(固有価値)」といったカテゴリーで勝利をおさめた。
  • 03
    ドイツ自動車所有者団体ADACの自動車調査AutomarxX**において、上位自動車メーカー3社の中にランキングされる。
  • 04
    The Best Cars 2005を受賞。***
  • 05
    80ヶ国以上における一貫したコーポレートデザインの実施。
  • 06
    新しいブランドアイデンティティによって、内外で高い認知度を獲得し、多くのデザイン賞を受賞し、最もブランドロイヤリティの高い顧客をもつ自動車メーカーとなった。****
  • *Auto Zeitung誌の2004年イメージ調査より、ドイツにおけるトップ40の自動車ブランドの中でのランキング。
  • **ドイツ自動車所有者団体ADAC(Der Allgemeine DeutscheAutomobil Club)の機関誌Motorwelt、2003年12月号より。
  • ***Auto Motor unt Sport誌の読者調査より、廉価車ミッドサイズクラス、ミッドサイズクラス、アッパーミッドサイズクラス、高級車クラスでの受賞。
  • ****Deloitte management consultantsによる。
b.

Brand Architecture

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

アウディのトレードマーク

高級品市場で求められるのは、上質な商品だけではない。ブランドイメージもまた重要な役割を担う。 アウディはそのブランドイメージ強化にむけて、明確なアンブレラブランド戦略をとる。アウディのトレードマークがブランドの視覚的シンボルであり、すべての子会社、事業領域、商品、サービスにおいて、このロゴがコミュニケーションに使われている。各関係者、関係事業はこのブランドによって利益を得るだけでなく、逆にその価値に寄与し、典型的なウィンウィンの関係を作り上げている。 メタデザインが作ったトレードマークは、上質なデザインによって、アウディの高度な専門的技術と高い品質水準を視覚的に表現する。アウディの全体にわたるブランドアーキテクチュアのシステムも、同事務所の開発による。

事業領域、サービス提供領域

商品名、複合表現

イメージ構築活動

店頭から公式ウェブサイトまで、ビジュアルアイデンティティの一貫性が打ち出された。この作業が、企業イメージ転換への布石となった。その後の数年間にわたり、明確なイメージ戦略と、これに波長の合った商品づくりによって、アウディは高級乗用車市場においてその地位を不動のものとしていった。

c.

Basic Elements

ブランドバリューを反映させた、基本デザインの開発

ここに紹介するエレメントは、あらゆるメディアに適用され、世界中で明確かつ一貫性のあるアイデンティティを作り上げている。アウディにとって「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」とは、行動と思考の両面において先頭を切ることを意味する。この目標は、コーポレートデザインの導入においても変わらない。基本エレメントおよびデザインの原則としてメタデザインが作り上げたのは、アウディのブランドとともに進化することのできる、柔軟性をそなえたコーポレートデザインプログラムだ。

アウディの色彩

アウディはアルミ車体の設計におけるパイオニアであり、技術では他社の追随を許さない。「アウディ・アル」色は、高度な専門技術と他にはない固有価値をあらわす、アウディブランドの一次色彩パレットで最も重要な色である。「アウディ・レッド」はトレードマークに限って使われ、アクセントとしての役割を担う。これ以外の色調の赤は、アウディの一次パレットにも二次パレットにも存在しない。

アウディ

アウディのタイポグラフィ

Audi Sansはアウディブランドを語る固有の筆跡であり、すべてのコミュニケーション媒体において中心的な位置を占める。このきりりとした、飾らない書体は、自動車メーカーとしての技術的専門性を強調している。Audi Sans Extendedで組んだ、ひねりの入った題字は、水平方向のラインを強調し、ダイナミックな視覚効果をもつ。アウディの左右非対称なタイポグラフィデザインは「スポーティ」というブランドバリューを表現する意味をもつ。

アウディ

アウディのデザイン原則

アウディのビジュアルアイデンティティがもつ特徴は、非対称性、ダイナミズム、そして透明性である。他社ブランドとの対比をねらうため、あえてアウディはデザインに非対称性を取り入れ、ブランドバリューである先進性とスポーティさを視覚化している。ダイナミズムと透明性は、グラフィックや写真から建築やショールームのデザインまで、あらゆる媒体に表れる。目標は、上質なデザインと素材によって、核となるブランドバリュー「固有価値」を強調することにある。

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

アウディの写真スタイル

アウディの仕事を手がけるエージェンシーやコミュニケーションキャンペーンにおける最大の課題のひとつは、同社の高品質な商品を、高級車市場にふさわしい方法で見せることである。メタデザインはアウディの写真スタイルを設定することで、世界中あまねく一貫した形でブランドアイデンティティが具現化されるよう保証した。

写真表現のスタイルを定義する8つのルールが、アウディ車に最適なプレゼンテーションのガイドラインを提供する。アウディはこれらのルールを用いることで、競合他社との間に一線を画している。ルールには適度な自由度があり、個別モデルの表現や、クリエイティブな解釈の余地を残している。

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

d.

Touch point

Architecture

コミュニケーション媒体としての建築

建築もまた、アウディのブランド価値を増幅するためのメディアである。これは「アウディ・ハンガー(航空機格納庫)」によってすでに実証されており、同社は「アウディ・ターミナル」によってさらに同じ路線を追求している。「ターミナル」は都市中心部のためにデザインされており、アウディはこれを活用して、都市部およびその周辺の人口密集地帯における存在感を強化しようとしている。メタデザインは、ディーラーや建設業者にアウディの建築のあり方を理解してもらうために、客観的で、かつイメージを誘発するコミュニケーション媒体を作成した。そこではブランドメッセージの説明に始まり、技術的なディテールの説明、建築外観やショールームのインテリアを描いたデジタルレンダリングを含め、広汎にわたってあらゆる建築エレメントの解説が提示されている。

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

アウディ
  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

Motor Sport

アウディのスポンサーシップ

アウディはブランドそのものの歴史と同じくらい古くから、自動車レースに参加し、技術力を発揮してきた。1980年代初頭には、同社は独自技術のクワトロドライブ(フルタイム4WDシステム)によって、ラリーの世界に革命をもたらした。

ル・マンおよびDTM(ドイツツーリングカー選手権)において、アウディは幾度かの連続優勝を飾っている。こうした実績が、ブランドスローガンの「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」に実体を与えている。

自動車レースにおいてブランド体験は重要な役割を担う。アウディのスポーツロゴ、作業服のデザイン、コースにおけるアウディの視覚的表示など、数々のアプリケーションにおいてコーポレートデザインシステムが活用されている。

アウディ
アウディ

自動車レース以外でも、アウディはトップクラスのスポーツイベントに対しスポンサーとなることで「スポーティな」高級車ブランドとしてのイメージを先鋭化してきた。スキーのFISワールドカップなど数多くのイベントにおいて、メタデザインが提供したベースにもとづいて、同社のビジュアルアイデンティティが表現されてきた。

アウディ
アウディ
アウディ

TV Commercial Ending

TVCMのクロージング

1999年以降、アウディのすべてのコマーシャルは、独特の「心拍音」と、アウディロゴの連なる四つの輪のショットで終わっている。この鮮明な記憶を残す「オーディオビジュアル・ロゴ」は、何よりもまず同社の音響アイデンティティを強化する役割を担っている。2005年にメタデサインは、同社の新しい品質基準を視覚的に訴える試みの一環として、この要素をブランドコミュニケーションの文脈で見直した。その結果、アウディ車デザインの大きなスタイルエレメントでもある「曲線」が、同社のダイナミックな精神をあらわすシンボルとして生まれ変わった。

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

  • アウディ

Electronic Media and Implementation

コーポレートデザインのポータルサイト

コーポレートデザインのポータルサイトは定期的に更新され、様々なユーザーに対して、アウディのコーポレートデザインに関する全ての情報を提供する。そこにはコーポレートデザインの構成要素に関する広汎にわたる説明があり、印刷物、広告、コーポレートブランディング、オフィスコミュニケーション、デジタル媒体、建築やショールームのデザインに関して、詳細な定義とガイドラインが提供されている。テンプレートや資料はダウンロードできる。

このポータルサイトは、全世界のアウディ従業員、エージェンシー、サービス会社に公開されている。更新や新しい開発のニュースは、メールマガジンによって定期的に配信される。

アウディ
アウディ アウディ アウディ
アウディ アウディ アウディ
  • アクサムでは、新しい仲間を
    募集中です

    熱意が人々をつなぎ、
    革新的なプロジェクトが始動します。

    アクサムでは、新しい仲間を募集中です
  • どうぞ、お気軽にご相談ください

    ブランディングプロジェクトや、
    共創・協業についてのお問合せをお待ちしております。

    どうぞ、お気軽にご相談ください

現在、ブラウザの拡大・縮小機能を利用中です。
アクサムのサイトエクスペリエンスのために、拡大・縮小をオフにすることをおすすめします。

×