すべてにわたるブランドと外観の統一
ブランディングを総合的に理解し、先鋭的な理念を持つ自動車メーカーと、メタデザインのような企業アイデンティティのコンサルタントが手を組むと、何が起きるのか。アウディのサクセスストーリーには、それがみごとに体現されている。長年のパートナーである両者は、ブランドマネジメントを経営戦略のプロセスと位置づけ、実施においてもこの文脈に従う。ブランドイメージは、企業、その製品、そして神話の、三つの相互作用から生まれる。アウディは昔からこの原理を認識してきた。創立以来、従業員は先鋭的に考え、行動し、競争の中で頭角をあらわすことを喜びとしてきた。この思想が、同社の製品とブランドをかたちづくっている。
Vorsprung durch Technik(技術による先進):高級車セグメントへの進出
アウディは1990年代半ば、フォルクスワーゲンとの明確な差別化がそのブランドポテンシャルを大きく引き上げるとの認識に基づいて、ポジショニングを見直した。新しい顧客層の獲得を期待して、新しい商品の投入が行われた。最高所得層の顧客に照準を合わせて、A8などのモデルがつくられた。メタデザインは、アウディの新しいポジショニングを視覚的に伝える役割を担った。新しいコーポレートデザイン計画と、コミュニケーションメディアのコンテンツおよびトーンを通して、アウディとメタデザインは時宜に合った効果的なブランドバリュー「人間性、優越、先見性、情熱」を発信した。「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」というブランドスローガンに、新しい次元が与えられた。
店頭から公式ウェブサイトまで、ビジュアルアイデンティティの一貫性が打ち出された。この作業が、企業イメージ転換への布石となった。その後の数年間にわたり、明確なイメージ戦略と、これに波長の合った商品づくりによって、アウディは高級乗用車市場においてその地位を不動のものとしていった。