部門横断的に集まった若手社員が主体となり、検討する
プロジェクト発足当時、事業再生中であったスカイネットアジア航空は、経営陣が幾度と入れ替わり、創業の理由や理念などを知る人が誰も残っていない状態でした。社名やロゴ、機体デザインに込められた想いなども、誰も知りません。このプロジェクトでは、スカイアジアネット航空とは何者で、どこに向かおうとしているのか。ブランドのアイデンティティを再定義することが大きな課題となりました。
そこで集められたのが、現場で活躍する若手社員でした。普段は顔を合わせることもないパイロットや整備士、地上職員やCA、経営企画や広報といった各部門から横断的にプロジェクトメンバーを集い、ワークショップやディスカッションを重ね、ブランドのコンセプトを明らかにしていきました。
社員の笑顔そのものが、ブランドの個性
議論の中で、よく耳にしたのが、「競合の航空会社と比較して、うちには強みがない」といった意見でした。また、一方で「強いてあげるなら、笑顔くらい」といって見せるやさしい笑顔が印象的でした。この一緒にプロジェクトを進めていても、人を和ませてくれる笑顔や雰囲気こそ、この会社の核となる価値ではないかと私たちは思いました。またそれは、他社では真似できない九州宮崎という土地柄に根ざした個性ではないかと考えたのです。
このような経緯から、「笑顔」をブランドのコアとする方向が固まり、「空から笑顔の種をまく。」といったコンセプト、そして、それを表彰する「Solaseed Air」という名称が定まっていきました。
「人と人が向き合う時、笑顔が生まれる」をロゴマークに。
つづいて、ブランドコンセプトをもとにデザインの開発を行いました。デザインのコンセプトは、「人と人が向き合う時、笑顔が生まれる。」この考え方からロゴマークは、「人と人が向き合い、つながる姿」「種が飛躍する姿」「大空に浮かぶ大きな笑顔」の3つを表現。親しみやすさと人間味をもたせたロゴタイプと合わせて、新たなブランドロゴとして開発しました。航空会社の場合、ブランドのタッチポイントの多くは飛行機の機体そのものとなります。機体デザインは側面にロゴタイプを大きく描き、ブランドカラーであるグリーンを各部にあしらい、遠くからでもソラシドエアとわかるデザインとしました。このデザインはボーイング社との共同作業で、塗装の厚さや面積などの技術的な要素も加味しながら検討が重ねられました。インテリアも、ブランドカラーをアクセントにしたカラーリングが施されています。また、乗務員のユニフォームは、ワークショップによりデザインの検討が行われ、クリーンでモダン、軽快でスタイリッシュなシルエットが採用されました。やはり自分たちが着たいと思えるユニフォームで業務に取り組みたい。そんな前向きな気持ちが生んだアクションプランのひとつとなりました。
プロジェクト後、業績はV字回復を達成。
九州の翼として、さらなる飛躍を。
プロジェクト実施後、ソラシドエアの業績は伸び、10機以上の新型機が追加導入されました。さらには、2015年には社名を正式に「株式会社ソラシドエア」を変更。九州の翼として路線も拡大しています。
このプロジェクトは、この機会を逃すと復活の可能性はないというところから始まった、ブランディングによる極めてわかりやすい成功例です。成功の要因は、社員が主役の改革であるということを徹底して貫いたことにあると思います。そして、その主役である社員たちは、自分たちの地元で生まれた航空会社に誇りをもち、その魅力を地元ならではの視点と価値観によって大きく高めていきました。見た目だけではなく、自律的な組織へと中身を変えることで、会社は劇的に生まれ変わる。そのことを痛感したプロジェクトでした。