理念とアイデンティティ経営
アイデンティティ経営のエリクソンモデル
心理学者 E・H・エリクソンは、アイデンティティを2つのアイデンティティに分けて説明している。1つ目のアイデンティティは、理念と自分の行動が一致していることを自己認識している状態。それを、自我アイデンティティと呼んでいる。もう一つのアイデンティティは、その理念と行動の一致を、他者が認知理解し受け入れている状態。人格アイデンティティと呼んでいる。アイデンティティ経営とは、それら2つが両立している経営のことをさす。つまり、従業員が自社の理念をよく理解し、誇りに思い、組織がそのとおりに動いている状態であり、同時に、顧客や社会といった外部の人々がそのことを理解・共感し、持続的によい経営結果を生み出している状態である。
個性の源泉となる偉大なる理念
組織の個性は、この経営理念によって織りなされる。理念によって裏付けられた個性は、 時がたとうとも色あせることはない。その時々の経営環境やトップがかわろうと揺るぎないアイデンティティを形づくる。理念は、人々の道しるべとして、ひらめきの源泉として時代を超えて生き続ける。今のブランディングにもっとも重要なことがらは、このような誰もがうなずくような、偉大な理念の形成である。この土台がない限り、コーポレートブランディングにいくら投資しようとも、成果は一過性のものになってしまう。経営理念は、「価値観 Core Value」と「企業目的Core Purpose」によって構成されている。価値観は、永遠に失われることのない魂であり、時代を超えた生きる原則、組織のDNAである。企業目的は、組織の存在理由であり、手に届かないがキラキラと輝く星であり、変革を促す役割をする。
理念の棚卸しから浸透まで
理念は、創造するものではない。発見するものである。「何を理念とすべきか」ではなく、「自分が熱くなれる、自分をささげるに足る価値ある理念とは何なのか?」を自分に問い続けることである。多くの従業員を巻き込みながら自分たち組織に潜在する価値の棚卸し(valueinventry)を行い「、自分たちが大切にしてきた価値」、「なくしたい価値」、「新しく付加すべき価値」というように価値要素を仕分ける。そのあと自分たちにふさわしい価値の創造(valuecreation)を行い、共有化(value sharing)を図る。多くの場合、それらのプロセスを踏みながら、最終的には強いトップの意志と宣言によって理念開発が進められる。ブランディングの初期段階では、このような根源的な理念の再確認、再構築が求められる。