Chapter 02
ブランディングパラダイム
Branding Paradigm

エーユー

au

ブランディングによるシェア純増率トップ

Pictures from WorldBranding

日本の携帯電話市場が、NTT(元国営企業)DoCoMoとその他いくつかの新規参入企業によって分割されていた2000年の夏、国内3つの通信会社が合併しauが誕生した。当初低迷していたauは、改めてブランドプロミスを設定し、au独自のデザインプロジェクトによる商品揃えを展開。サービス揃え、価格設定、店舗チャネルの改革も進み、ブランドへの好感度とシェアの純増率はNTT DoCoMoを大きく引き離しトップを走っている。

a.

Birth and Rebirth of au

携帯電話ブランドauの誕生

現代の日本では、携帯電話は仕事はもちろん、交友関係を築くのにも欠かせない必携ツールとなっている。2006年11月現在の累計契約数は約9500万台。携帯電話を使用しない年齢の人口を差し引くと、1人1台以上持つ時代である。しかし、その歴史はまだ20年足らずで、NTTが自動車電話を経て本格的に携帯電話のサービスを開始した1987年が始点となる。翌88年にトヨタ系の日本移動通信(IDO)、89年からは京セラ系のセルラー各社(DDI系)が順次サービスを開始し、携帯電話市場が一気に活気づいた。その後、94年に端末売り切り制度が開始したのを皮切りに、デジタルホン、ツーカーデジタルホン、ツーカー各社の参入により、購入価格、月次料金が一気に下がった。多社乱立状態の中で各社はシェアの確保に苦しみ、唯一安心感で支持されたNTTの独走状態が続いていた。新たな動きがあったのが99年、業績が低迷していたデジタルホンとツーカーデジタルホンがJ-PHONEブランドに統一。2000年7月にはIDOとセルラー各社の統一ブランドとしてauが誕生した。NTTから既に分離していたNTT DoCoMo、J-PHONEからブランド変更したvodafone、TU-KAと共に、現在の4ブランド時代へと突入したのである。

auの低迷

しかし新たなスタートを切ったものの、auは純減を記録。いきなり苦戦を強いられることになる。当時、携帯電話の競争の主軸は「音声サービス」から「データサービス」へと移りつつあり、携帯電話によってもたらされるエモーショナルな経験が重要視されるようになっていた。しかしauはこういう流れに対応できず、ユーザーが求める商品やサービスを投入することができていなかった。「CMはおもしろいけれど商品はとがりすぎ」といった声が聞こえ、広告のイメージと実際の商品との隔たりも問題として上がってきた。またブランドイメージも、DoCoMoは「信頼できる」、J-PHONEには「ファッショナブル」という評価がある一方、auは魅力的な商品・サービスがない中での「ガク割」導入により、「学生向けで安かろう、悪かろう」のイメージを持たれるようになってしまった。

auの復活のシナリオ

そこで、ブランドの価値を明確化するためにまず使ってもらいたいコアユーザーを、「すでに携帯電話を日常生活のコミュニケーション活動の中に取り入れ、生活をより自分らしく豊かにしたいと思っている人々」に設定。auが提供する価値とパーソナリティ、ブランドプロミスを規定した。また5年間を3フェーズに分けて目標と重点戦略を策定するなどして、auブランドの定義づけを行っていった。具体的には、通信事業として、企業として当然実施すべき基本活動(たとえば安定した通信環境、販売店などでの気持ちのよい対応、ユーザーニーズに応える商品やサービスの提供など)を土台としたうえで、プラスαの活動、つまり、新しくユニークな商品やサービスを他社に先駆けて提供したり、ユーザーに向けて統一した「auらしさ」を発信していった。auの携帯電話を持っているかどうかに関わらず、携帯電話利用者にイメージアップを図り、期待される企業となれるように努力する。そうしてau独自の価値を提供することにより他社との差別化を図り、総合的なブランド力で上回る―というシナリオを作成した。それらすべての集大成として、auブランドを強く訴求していったのである。

auブランドの成長

auのブランドアイデンティティを明確化するプロジェクトがスタートし、ブランド力をより向上させるためデザイン戦略に加え、サービスやプライシング面でも相次いで戦略を仕掛けていった。それらが功を奏し、一時はJ-PHONEの「写メール」効果により業界3位に転落していたauは、2001年末からは次第に人気が復活。2006年には、累計シェアこそNTT DoCoMoが依然として強さを誇っているが、純増契約数は3年連続でauがトップ。「最も満足度が高い携帯電話会社」という評価も勝ち取っている。2006年10月から日本では、番号ポータビリティ制度が導入され、ユーザーは携帯電話番号を変えることなく携帯電話会社を変更できることになる。民間から生まれたauは、この変化を自らの大きな飛躍のチャンスととらえ、かつて公社であったNTTのDoCoMoよりも常に早く先を走ろうとする意思をもって、独自の強いブランドポジションを獲得して行こうとしている。

3社合併によるau誕生

2000年、日本国内の通信3社(KDD,DDI,IDO)の合併により、新しい移動体通信事業が生まれた。それをauというアルファベット2文字のブランドで呼ぶことにした。auは、「access to you」「access to universe」といった言葉の頭文字からとった。(日本語でauを発音すると、「出会う=meet」という意味にもなる。)

auブランディングの基本フレーム

auブランディングは、ターゲットユーザーの分析から始まり、KDDI理念を源泉に、auならではのブランドプロミスを、諸々のドライバー(製品開発、サービス開発、プライシングなど)を通して、全社横断的に一貫性をもって顧客に届けられるように推し進められた。

純増シェアの推移

auブランドの活性化により、一人勝ちをしていたNTT DoCoMoの成長を越え、ユーザーからの期待は高まり続けている。

(2000年6月までは、IDOとDDIセルラーホンの合計を示す。急激な加入者減に直面していた。)
b.

Brand Strategy and Design Project

ブランド経験としての端末デザイン

デザインプロジェクトを起点としたauのブランド戦略は、デザインという視点から携帯電話を考え直し、誰もが心のどこかで思っていた「ケータイのカタチ」を具現化するという作業から始まった。デザインを核にauのブランド構築を図ろうとしたのである。それは、単純な技術や価格競争からの脱却を意味した。戦略は大きく分けるとレギュラー製品のデザインとコンセプトデザインという2つのラインから展開していくことになった。

レギュラー製品のデザインマネジメント

それまでレギュラー製品のデザインは携帯電話メーカー各社のインハウスデザイナーに任されており、auのデザインと呼べるものが見えにくくなっていた。その状態を改善するため、商品ラインナップ全体を見渡す役割としてデザイン・ディレクターを起用。メーカーからデザイン提案を受けるのではなく、au側からデザイン戦略をプレゼンテーションし、プロデュース&マネジメントしていくことになったのである。

ブランディングとしてのデザインプロジェクト

また、2001年3月にはauが目指す携帯電話のデザイン指標として、外部デザイナーによるコンセプトデザインの開発に着手した。コンセプトデザインとは聞こえのよい抽象的な言葉やスローガンではなく、コンセプトモデルという具体的なカタチで「au」ブランドが目指すもの、さらにはKDDIブランドが目指す方向性を対外的にだけではなく社員にも提示し、ベクトルを揃えていくためのものであった。さらに、「auブランドとは何かを具体的に示すためのツール」としての役割も担っていた。そしてテーマは「シンプル&モダン」と「クオリティ&ユーモア」が選ばれた。

auブランドが目指すこと

私の生活を楽しく、
豊かにしてくれる
感動を与えてくれる、
私らしさを引き出してくれる

「感動ケータイ。」

レギュラー製品

(端末メーカーによるデザイン)

デザインプロジェクト製品

(auによるデザイン)

デザインコンセプト=
シンプル&モダン/クオリティ&ユーモア

デザインプロジェクトの効果

2003年のINFOBARの発売は、一般消費者はもちろん、デザイン業界などにも大きなセンセーションを巻き起こした。auのイメージは一挙にアップし、他社と比べて「新しいことにチャレンジしている」「個性的」「顧客のニーズをわかっている」などの項目で、より高い評価を受けるようになった。最近では「革新的」「いま旬である」「スタイリッシュ」などの声も多くなり、デザイン雑誌「AXIS」が行った「デザインが強いと感じる企業・ブランド」についてのアンケートでは、日本企業ではソニー、無印良品などに次いで7位に挙げられている。また、ユーザー対象の端末に対する満足度調査でも、他社を大きく引き離して1位となっている。

デザインとブランディング

INFOBARにより、他社差別的なパーセプションを獲得

2004年4月 KDDI実施調査

「AXIS」掲載 auデザインの評価

デザインが強いと感じる企業・ブランド

1位 アップル Apple Computer (153)
2位 ソニー Sony (13)
3位 バング&オルフセン Bang & Olufsen (57)
4位 無印良品 Muji (36)
5位 日産自動車 Nissan (27)
6位 ナイキ Nike (22)
7位 au/KDDI au/KDDI (20)
7位 ホンダ Honda (20)
7位 資生堂 Shiseido (20)

2004年6~7月 株式会社アクシス実施調査
「AXIS」2004年12月号 掲載

端末に対する満足度

端末の総合的な満足度は、auが83%と3キャリア中最も高い

2006年4月 KDDI実施調査
c.

Design Project

Design Project: INFOBAR

ファッションアイテムとしての携帯電話

低迷の原因を探るために様々な調査を行った結果、「ユーザーにとって携帯電話は電子機器ではなくファッション・アイテムである」という認識が浮かび上がってきた。生活が豊かになるとともに、生活者はすぐれた機能や性能よりも、感覚をときめかせるような「経験」を求めるようになる。これを裏付けるように、インテリアや家電などでも世界的なデザインブームが巻き起こっていた。携帯電話は単にネットワークサービスを提供するためのデバイスではなく、ユーザーとの最も大切なタッチポイントであり、デザインは携帯電話ブランドの顔となったのである。このように市場はデザインのよいケータイを求め始めていたのに、auのデザインは非常に評判が悪かった。このことから、業績の向上にはデザインとブランディングが必須項目であると位置づけられたのである。

「今すぐ欲しい」アイテムデザイン

コンセプトデザインの開発に当たっては、「信頼のおけるデザイナーの選定」「リアリティ確保のために必要な情報だけ伝える」という2つの要素が重視された。デザインは当時IDEOJapan代表であった深澤直人氏とエルグデザインの二階堂隆氏に依頼された。この結果生み出されたのが、斬新なデザインで話題となったINFOBARやrotaly、wearableなどである。これらは、次世代ケータイのプロトタイプのように新技術を見せるためのモデルとは一線を画していた。デザインの視点から「今すぐに欲しい」と思ってもらえるようなものであり、メーカーに対してauが目指す姿を明示することで、ラインナップのデザイン的指標として機能することを目指した。

INFOBARプロトタイプデザイン

Photo: Hidetoyo Sasaki

INFOBARのデザインアイディエーション

INFOBAR NISHIKIGOIのグラフィックパターン
Nishikigoiとは、日本語で錦鯉=colored carpの意味

INFOBAR NISHIKIGOIのプロダクトデザイン

INFOBARの見本市及び街中におけるプロモーション

INFOBARの横断的なデザイン展開

2001年にプロトタイプとして発表されたINFOBARは大変な評判となり、2003年には一般に発売されることになった。INFOBARの広告活動では、今までにない新しい方法が採用された。すなわち、INFOBARという商品を核として展示会やテレビCM、新聞や雑誌の広告、webなどマスメディア関係はもちろん、パッケージデザインや卓上ホルダー、街頭でのポスター・パンフレットなどに至るまで、横断的なタッチポイントでイメージを統合していったのである。通常は各媒体ごとに個別に展開してそれぞれ別のメッセージを発信するが、INFOBARのケースでは一体となって展開したため、消費者がどのツールに接触した場合でも同じ情報やイメージを受け取ることができ、一貫した世界観を構築することに成功した。これにより、非常に強いブランド訴求を行うことが可能になり、ブランド力の向上を効果的に行うことができたのである。また、INFOBARに対する世間の高い評価を逆輸入することで社員が自信を持ち、社内が活性化されるという効果も発生した。

Design Project: talby

talby(2004年発売)

シンプルでクリーン、そしてモダン。talbyには、見る人が欲しいと思う全てのものが備わっていると同時に、それ以上の余計な何かがあるわけではない。世界的なデザイナー マーク・ニューソン氏による比類のないスーパーフラットデザインは、限りなくスリムで、ポケットに入れるにも首からぶら下げるにも最適。非常に質の高い構造と技術が特徴的で、ソリッド感に溢れている。talbyという名は、彼の好きなSF映画の一つ、「ダーク・スター」(監督:ジョン・カーペンター)の登場人物に由来する。「ものすごく馬鹿げているけど、冷静であくせくしたところがなく、すごくユーモアがあって面白い」という彼がいつも探し求めているキャラクターをテーマにしているという。ビジュアルデザインやサウンドデザインにも独自のこだわりを見せ、大きなストラップホールにフィットする専用ネックストラップも付属している。

Design Project: neon

neon(2006年発売)

「neonはいわゆるカタチとしてのデザインではなく、存在そのものをデザインする意味で取り組んだ」とデザイナー深澤直人氏は話す。全く何もないところに表示が出るという通常のプロダクトでは有り得ない試みを盛り込んだ点にこそ、重要な意味がある。「その振る舞いというか、見え方がネオンのようだ」と開発時に話していたことが、ネーミングにつながったという。デザイン的にはもうこれ以上そぎ落とすことはできないほど単純でハイデザインなプロダクトであるが、単なるストイックな四角ではなく、「積み木」のようなイメージで、フレンドリーで且つやさしい形を作り込んでいる。その重要な要因が、適度な丸みを持ったコーナーのアールと、陶器のような輝きと質感を持つつややかな色である。また、デザインのみを追い求めたのではなく、非常に高機能なスペックを搭載しているのも特徴の一つ。さらに、家に持って帰って机の上に置いたときに時計として美しく、ミュージックプレーヤーとしてスピーカーにつなげることも想定したデザインや、見た目にはただの平面だけれどタッチにこだわった使い勝手など、持つ人の日常の奥まで考えた新時代の携帯電話である。

Design Project: Symbolic Promotion by The Prototype Designers

ishicoro(2002年発表)

ishicoroの製作では、実際に河原で石を探してきて型を取ったという。人工的な線で石のように作られた形よりも、石そのものの不均一な面の方が「より手で拭われながら表面を確かめる行為が生まれやすい」と考えたのである。着信時には、石に内接された長方形が着信音と同時に発光する。その長方形は表示部の輪郭として、また情報の出入口のアイコンとして、使用者の脳裏に共通の記憶を焼き付ける。形そのものが光り、情報の着信を意味するインターフェイスとして、より直接的な繋がりを作る。今までの電子機器は小さなLEDの光やディスプレイの中のアイコンのような「記号」がその役割を果たし、部品の入れ物と中身という分離した考えがいつもあった。ポケットの中で石が振動する。卓上のノートの上で石がぼわっと光り、情報の入手を暗示する。モノ全体が環境と人の行為にはまっていくようなデザインなのである。ishicoroには、触れていたいと思わせる魅力がある。携帯電話にも、人が長い間求めてきたコミュニケーションツールとしての魅力がある。ishicoroは、この二つの組み合わせが新しい必然であると示唆している。

Photo: Hidetoyo Sasaki
ishikoroとは、日本語で石コロ=stoneの意味

wearable(2001年発表)

起きている間は数分ごとに手に取り、寝るときも常に近くに置いておく。若い世代を中心に、携帯電話を片時も離したくないと考える人が増えている。いっそのこと、ケータイと人を一体化することはできないのか? この問いに対する答えのヒントを、身につけるアクセサリーに見出したのがwearableである。ブレスレットやペンダントをイメージしてデザインしたメッセージデバイス、ポケットインタイプの大型モニタデバイスなど……。アクセサリーとしてさりげなく装いながら、自然に無駄のない動作で使用する。24時間可能な限りそばに置き、少しの動きも見逃さないようにする。人とケータイとの蜜月の日々が、ここから始まる。

GRAPPA(2002年発表)

携帯電話は次々と新しい機種が発売されては消えていくけれど、auデザインプロジェクトはそうした流行的なものではなく、愛着を持って長く使ってもらえるモデルを作ることを目指している。たとえば、GRAPPAには革が使用されている。これは、使い込むうちに生まれる革ならではの様々な風合いを想定してのことだという。艶が出てきたり、あるいはすり切れてきたり、人それぞれの使い方によって変化する風合い。革製品ならではの独特な楽しさであり、今までの携帯電話にはない体温的感覚だといえるだろう。さらに、高級感を感じさせるクロムメッキの美しいデザインや、開いたときにフラットなフォルムになるヒンジ構造は、今までの折りたたみ型にはない表情である。ステータス感や品格、こだわりの一つひとつに妥協せずに取り組み、愛着を持って使うことができるモデルである。

MEDIA SKIN(2005年発表)

人は一日のうちにどれくらいの時間、携帯電話に触れているのだろうか。今最も人体に近いプロダクトは携帯電話であるかもしれない。ポケットに手を入れると、財布や名刺入れ、車のキーといった、手のひらにやさしい感触を残す物たちの存在に気づかされる。そのほか、カメラのグリップや車の内装、バックなどにおいても、人が日々繰り返す「触れる」という行為の両隣りに、体の一部のようなやわらかい物が存在し、私たちは無意識のうちにそれらを使っている。人と物が一体化する携帯電話の姿を考えたとき、まず人体に近い存在となる「第二の皮膚」を探すことからスタートしたという。今日では、医療の分野においてもシリコンや人工皮膚、そしてゲルといった素材の可能性が探求されている。その中で、皮膚のように限りなく人体に近い存在でありながら、まるでグリップでできたようなデザインを目指したのだ。MEDIA SKINは、人にやさしく、話す人が美しく引き立つようなフォルムと本物の質感を持つことで、体との一体化に成功したといえる。

Hexagon(2005年発表)

見る人を魅了する宝石や、官能的な衣服やランジェリー、香水など……。機能性という言葉では説明できない、心理的な効果を持つもの―「官能する罠」とでも呼ぶべきものたち―がある。同様に、異性を魅了する魔法のような効能を持つ携帯電話があってもよいのではないか? 持つ人のエロティシズムの表現の延長線上にある、官能的なデザインを持つ携帯電話があってもよいのではないか? 今後のテクノロジーは進化から深化へと、人の内面にある情感へと向かっていくだろう。もともとはコミュニケーションのために作られた携帯電話という道具が、より人間らしいエモーション=情感に近づくためには、持つ人が工業製品であるということを忘れてしまうような力を持ったデザインがあってもよい。携帯電話は既にファッションのように、鏡の前で自分とのデザイン的な相性を見つめて選ばれる商品になろうとしている。

d.

Service Merchandising and Brand Strategy

auは携帯電話を、単なる通話のための道具としてだけではなく、日常の生活を楽しく豊かなものにしてくれるアイテムとして、人々にどれだけ親しみのあるものにしていくかを、サービス揃え(マーチャンダイジング)の面でもこだわり続けている。日本で初めての音楽配信や、テレビや様々な映像プログラムの配信、携帯電話という特性を生かして今すぐ欲しいものを買えるショッピングなど、他社に先駆けたauのサービスが音楽、映像、ゲーム、ナビゲーション、ショッピングの分野に特化しているのは、自然なことであるといえる。それらのサービスは一つひとつがバラバラなのではなく、「感動ケータイ」という「auらしさ」のもとで作られ、他のサービスや端末、料金などとも連携している。感動=気持ちや五感に訴えるサービスとは、楽しさを得られるゲームであったり、便利で安心なナビであったり、単純に使って便利なだけではなく、どう感じて欲しいかを常に考えている。信頼や安心感がベースにあり、さらに楽しさ、感動、ワクワク感などをプラスすることで他社と差別化し、auならではのブランドを作っていこうとしている。

音楽ネット配信サービス"LISMO!"の広告プロモーション

音楽

auは、携帯電話を生活の中の感動ツールとして位置づけ、日本で初めて、携帯電話とPCがシームレスに連携する総合音楽サービス=LISMOを開始した。LISMOとは、Listen Mobile Serviceの略であり、(LISの発音は、日本語でリス=squirrelの意味)、リスのキャラクターによって、サービスをわかりやすく印象強く説明している。

EZ「着うた®」「着うたフル®」

2002年12月、着信音を歌声で配信するEZ「着うた®」のサービスを開始。

2004年11月、EZ「着うた®」に続いて EZ「着うたフル®」を開始する。携帯電話で初めての音楽配信として話題になる。いつでもどこでも好きな楽曲を1曲丸ごとダウンロードできて、好きなときに高音質で楽しめるサービスとして親しまれている。

LISMO!

2006年1月にスタートした総合音楽サービス。J-POP中心の豊富なラインアップを揃え、携帯電話でダウンロードしたりPCでも簡単に買うことができる。支払いは、月々の携帯電話代と一緒にまとめて支払うことができる。

映像

地上デジタル放送「ワンセグ」や現在のアナログ放送をいつでもどこでも携帯電話で見られるサービスや、音楽、ニュース、天気予報、エンタメ、ショッピングなど多様な番組を定期的に自動配信し、最新の情報をチェックできるサービスなどがある。

GPSナビゲーション

地図上で自分の位置が確認できる「EZナビウォーク」は、携帯電話業界初のナビゲーションサービスであり、今では、3Dナビで、よりリアルにわかりやすくなっている。「助手席ナビ」は、助手席に座る人がドライバーの運転をサポートするためのナビゲーションサービスであり、「安心ナビ」は子供の安心安全というニーズに応えて子供の居場所が確認できるナビケーションサービスである。

ショッピング

様々なジャンルの商品の中から、いつでも、どこでも、片手でショッピングを楽しめる「au Shopping Mall」や、携帯電話ひとつで簡単に入札、出品から落札まで可能な「au Auctions」などがある。その他にも本、CD、ゲーム、チケットなどを購入できるサービスや旅行予約ができるサービスもある。

Pricing and Brand Strategy

音楽や映像プログラムの配信、ゲーム、ナビなど、他社に先駆けて提供してきたauのサービスを、ユーザーに料金に気兼ねなく使ってもらうため、またauの世界観を存分に知ってもらうために、業界初のデータ通信定額制など画期的なプライス設定に努めてきた。

auはプライシング(価格政策)を、ユーザーがauに加入する動機(トリガー)と、auへのロイヤリティを長期にわたって維持するための重要なブランドドライバーとして位置付けているのである。

2003年から始まった定額制は、そのサービスを価格を気にせずに実感してもらうためのプライシングであったといえる。その他にも、常に顧客と向き合う姿勢の中から生まれた「無期限くりこし」プラン。総合通信企業だからこそできる「au→自宅割」など、auならではの料金プランがある。また「ひとりでも家族割」というコンセプトでの「MY割」では、auに魅力を感じながらも、他社で家族割引を組んでいる人にも気兼ねなくauを経験できるように導入した。

同時にauは、これからのサービスの開発・取り組みのために、ある一定以上の収益を確保することが課題となっていた。値下げ競争に突入して業界全体が疲弊してしまう方向ではなく、ユーザーが納得できる料金体系でかつ健全な収益体制を築くことこそが、新しいサービスへの積極的なチャレンジにつながると考えたのである。

基本料・通話料の割引サービス

無期限くりこし
ユーザーが指定した月額料金プランの中で、その月に使用しなかった通話料は、無期限にくりこされていくサービス。
MY割
2年間継続利用を約束したユーザーは、初年度36.5%、2年度38.0%の基本料金の割引がある。10年度まで継続使用すると、50%割引になる。
年割
契約期間は1年単位で、初年度は基本使用料が15%割引になる。継続すると割引額は年々UPし、最大で基本使用料が35%割引になる。
家族割
家族でそれぞれがau携帯を使用する場合、基本使用料は25%割引。家族間通話は30%割引(指定割を併用すると60%割引)。家族間Cメールは無料。あまった無料通話料をその月のうちに家族で分け合える。
au→自宅割
au携帯電話からKDDI経由の自宅電話に電話をするとき、通話料が50%割引になる。

パケット通信料割引サービス

パケット通信料定額サービス
Eメール通信料とEZweb(インターネット通信)の両方の通信料が、2,000円/月(税込2,100円)からはじまる定額制。どんなに使っても4,200円(税込4,410円)が最高額となる。また1,000円/月(税込1,050円)からはじまる「ダブル定額ライト」もある。

Shop Channel and Brand Strategy

店舗空間によるau経験

白を基調に、ブランドカラーであるオレンジをアクセントにした店舗デザイン。にぎやかな色が無秩序に溢れた街を歩いていても、auの店舗はすぐ目に留まる。すっきりとしたイメージでありながら、明るさ、元気さ、楽しさが感じられ、つい覗いてみたくなるような印象を与えることに成功している。店内に関しては、清潔感、整理整頓、レイアウト、親しみやすさ、auらしさなどについて頻繁にチェックし、常に気持ちのよいショップ作りを目指す。一方、リロケーション(統合再編計画、移転計画)面でも、ユーザーの動線に合わせて利便性を考えながらの推進を心がけている。

接客によるau経験

店舗での接客面では、ユーザーの要望に合わせた高い知識と心からの笑顔での応対を基本としている。他社のお客様が来店した場合でも、好印象を与えられるようにと想定した接客である。そのためにはマニュアルの充実と教育、ショップスタッフの増員、フロアアドバイザーの配置などの対策を随時行っている。またショップスタッフのモチベーションを上げるために「Smile!WIN(スマイルウィン)」という制度を実行したり、CS AWARDSでスタッフのレベルアップを推進。さらに、プロスタッフ、ハートフルスタッフなどの資格の取得を奨励して、セールススキルや接遇力の強化に努めている。

Smile!WIN

auは来店顧客に笑顔になっていただくために、スタッフが心からの笑顔になることを大事にしている。心からの笑顔になるには、スタッフが高い知識とマナーを持ち、自分自身がauのファンであると思えること。それを顧客に伝える一連の活動をSmile!WINと呼んでいる。

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