ブランディングプロジェクトの目的と課題
ヒューマングループは、社会人向け教育のヒューマンアカデミーや人材派遣・紹介のヒューマンリソシアなど人材にかかわる事業会社の集合体である。
特にヒューマンアカデミーは、教育プログラムだけでも数百とある日本最大の資格取得とプロフェショナル教育の学校であり、人材を社会に送り出すヒューマンリソシアとのシナジーがこのグループの特徴であり魅力になっている。
ヒューマングループは、自己増殖するように急速に事業拡大を遂げていたが、ややもすれば事業のベクトルが散逸になりアイデンティティが拡散する兆候をはらんでいた。
従って、ブランディングプロジェクトの一番の課題は、強い遠心力をもつ企業グループに、コアとなる価値を埋め込み、組織に求心力と一貫性と方向性を与えることであった。同時にもう一つの課題は、中期的な経営戦略として、プッシュ的な活動を中心にしてきたフロー型マーケティングから、ヒューマンというブランドの魅力によって人が集まってくるようなストック型のマーケティングへの転換を実現するために、ブランディング戦略が求められていた。
日本の人材市場の変化
ヒューマングループの事業拡大は、日本市場の構造的な環境変化が大きな要因になっている。一つ目の大きな要因は、日本の高度成長を支えていた企業の「日本型経営」の崩壊にある。1990年以降におきた長期的な不況による急速なリストラクチュアリングは、企業をスリムで高性能なマシンに仕立て上げたが、同時に職を失う人材があふれ出した。また、グローバルスタンダードと呼ばれるアメリカ型の評価主義の導入により、人材が急激に流動し始めた。
この10年間で日本型経営の代名詞であった「終身雇用」「年功序列」「企業教育」「家族主義」は、一気にこの日本から消えていった。また、2つ目の要因は、教育と社会とのアンマッチングとフリーターの急増があげられる。20代半ばの定職につかない青年がこの日本には300万人以上もおり、自分のキャリア開発のための人生の大切な時期を失っている。
このような環境変化の中で、先が見えない自分探し層が急増し、多くの仕事探しや資格取得のための雑誌が刊行されているという状況である。