Chapter 02
ブランディングパラダイム
Branding Paradigm

ヒューマングループ

Human group

社会人教育・人材紹介派遣・介護ビジネスのヒューマングループは事業が多様化し急成長するなかで、グループ事業全体を統合できる自らの固有の事業ドメインの設定を必要としていた。また市場における強いアイデンティティとブランド価値を高めるために、ブランディングプロジェクトが推進していった。

「成長の輪:HumanSelfing」をブランドプロミスにそれぞれのグループ企業の自主性を引き出すようなデザインシステムが導入。Selfingカウンセラープログラムも開発導入された。

a.

Corporate Branding of Human Group

ヒューマンホールディングスの新しいロゴ
プロジェクトは、ベルリンのメタデザインと東京のアクサムコンサルティングの共同で推進された。ヒューマンホールディングスのマークは、「教育ルネッサンス・産学協同・国際教育」の3つの方針を象徴している。

ブランディングプロジェクトの目的と課題

ヒューマングループは、社会人向け教育のヒューマンアカデミーや人材派遣・紹介のヒューマンリソシアなど人材にかかわる事業会社の集合体である。

特にヒューマンアカデミーは、教育プログラムだけでも数百とある日本最大の資格取得とプロフェショナル教育の学校であり、人材を社会に送り出すヒューマンリソシアとのシナジーがこのグループの特徴であり魅力になっている。

ヒューマングループは、自己増殖するように急速に事業拡大を遂げていたが、ややもすれば事業のベクトルが散逸になりアイデンティティが拡散する兆候をはらんでいた。

従って、ブランディングプロジェクトの一番の課題は、強い遠心力をもつ企業グループに、コアとなる価値を埋め込み、組織に求心力と一貫性と方向性を与えることであった。同時にもう一つの課題は、中期的な経営戦略として、プッシュ的な活動を中心にしてきたフロー型マーケティングから、ヒューマンというブランドの魅力によって人が集まってくるようなストック型のマーケティングへの転換を実現するために、ブランディング戦略が求められていた。

日本の人材市場の変化

ヒューマングループの事業拡大は、日本市場の構造的な環境変化が大きな要因になっている。一つ目の大きな要因は、日本の高度成長を支えていた企業の「日本型経営」の崩壊にある。1990年以降におきた長期的な不況による急速なリストラクチュアリングは、企業をスリムで高性能なマシンに仕立て上げたが、同時に職を失う人材があふれ出した。また、グローバルスタンダードと呼ばれるアメリカ型の評価主義の導入により、人材が急激に流動し始めた。

この10年間で日本型経営の代名詞であった「終身雇用」「年功序列」「企業教育」「家族主義」は、一気にこの日本から消えていった。また、2つ目の要因は、教育と社会とのアンマッチングとフリーターの急増があげられる。20代半ばの定職につかない青年がこの日本には300万人以上もおり、自分のキャリア開発のための人生の大切な時期を失っている。

このような環境変化の中で、先が見えない自分探し層が急増し、多くの仕事探しや資格取得のための雑誌が刊行されているという状況である。

旧シンボルロゴ

増殖するヒューマングループ事業群を分類整理した

市場セグメントと深層心理

ヒューマングループのブランディングプロジェクトは、既存顧客や見込み顧客の方々に対するグループインタビュー調査の実施から始まった。ヒューマンに対して持っているイメージや期待することを浮き彫りにすると同時に、自分の成長や学習と、仕事や社会に参加する喜びに関係する意識や深層心理を探っていった。その結果、仕事に対する意識(キャリアパーソナリティ)を5つのセグメントにわけ、それぞれの特性と期待価値、学校を選択する際のトリガーを分析。ヒューマンが持っている資源や強みとつき合わせながら、これからのヒューマングループがもつべき約束価値を導いていった。

「自分探し層」へのフォーカス

5つのセグメントの中で、特にヒューマングループの提供価値を受容しやすいボリュームゾーンの人々がもっている共通の価値は、「自分探し」と「自己確立」というキーワードであった。自分らしさを大切にし、自分の力で自分の人生を切り拓いていこうとする「自分確立のプロセス」を、ヒューマングループは一生にわたって支援していくという約束をする……という構想が導かれていった。「自分探し」と「自己確立」というキーワードが、「Human SELFing」と社内で呼ばれるようになり、現場の仕事やビジネスモデルとの整合性を図りながら、最終的なブランドプロミスの設定が行われた。

顧客の深層心理を探るために心理カウンセラーによるグループインタビューが実施された。

NOHL図(New-Old, High-Low チャート)

Group1
ヒューマン・アカデミー
社会人
Group2
競合専門学校
社会人
Group3
ヒューマン・アカデミー
全日制
Group4
競合専門学校
全日制
Group5
ヒューマン・タッチ
既存派遣員

ヒューマンブランドのターゲットセグメントの検討ボード

Corporate Philosophy and Brand Promise

新しいヒューマンブランドを支えるブランドの約束価値(バリュープロミス)を設定した。バリュープロミスは、創業者が創業以来、大切にしてきた企業理念を源泉としながら、 ヒューマングループから提供される価値とステークホルダーが期待する価値を重ね合わせて策定された。

ヒューマンのブランドは、ゆるぎない企業理念とブランドが約束する価値、そしてブランドのパーソナリティと行動指針(ビヘイビア)の規定によってそのコンセプトを明確にしていった。

人と社会の成長の環を、無限に拡げていく

人材を受け入れる企業からすれば、最適な人材の確保により、企業そのものの改善や変革、成長に貢献する。ヒューマンは、まさに人と企業の「セルフィング(自己発見と自己確立のプロセス)」をドメインとした企業体。ヒューマンのセルフィングは、様々な分野をカバーし、その市場は海外にまで拡がっている。

ヒューマンの事業は、そのように人と社会の成長の輪を、無限に拡げていくビジネスといえる。

バリュープロミスの設定

ヒューマングループの価値体系

b.

Design Principles

ブランドを視覚的に表現するために、ロゴやカラーだけでなく、人がパターン認識しやすいように、ヒューマン固有のデザイン原理を規定した。

写真によるブランドストーリーづくり
カラーによるブランドストーリーづくり
タイプフェイスによるブランドストーリーづくり

ブランドイメージボード

ベルリンと東京で同時にデザイン開発するための共通ボードとなった。

Basic Elements

ブランドロゴ

人間はいつも活動し、表現しているので、マークは固定化せず様々な人間の動態を準備し、すべてをヒューマンのブランドロゴとした。

7色(全色)のグラデーションは、生命体の中をエネルギーが循環している様子を描いている。

また、創業者のもつ、仏教の教えの一つである無限大∞の思想を表す意味で、∞の図形と同じ一筆書きでロゴを制作した。

ブランドアーキテクチュアとカラーシステム

ヒューマンホールディングスのもと、いくつかの事業カンパニーによって、それぞれのミッションと市場を分かち合い、それぞれにシナジーが生まれるようにシステム的な展開が行われた。

ブランドアーキテクチュア

カラーシステム

c.

Stationery

ステーショナリーは各カンパニーの個性よりもグループ全体の統合感を重視してデザインされた。

名刺

社章

事務用封筒

商品パンフレット

商品パンフレットは、全国の営業所で活用され膨大な種類を有するために、それらを識別するためのカラーシステムが採用された。

Signage Communication System

教室のサインから、街中の広告サインまで様々なサイズ対応するシステムが組み立てられた。

Web Site

もっとも顧客が接するメディアであり、ヒューマンのデザインプリンシプルとカラーシステムを採用しながら、情報デザインが展開された。

ヒューマングループ

ヒューマンアカデミー

Brand Promotion

新しいブランドの認知・想起度を上げるために、テレビ・新聞・雑誌といったマスメディアとその他のメディアによるメディアプランの策定を行った。ブランドプロモーションでは、ブランドターゲットが尊敬している女性モデルを起用し、彼女自らセルフィングについて語ってもらった。

新聞広告

d.

バリュープロミスが策定された時点から、社内にブランディングの目的や新しいブランドプロミスを浸透させるために、まずは現場のカンパニーのリーダーに集中的なワークショップによる研修を実施した。現場のリーダーに理解・共感してもらい、自らの言葉で自分の部下にブランディングの必要性やこれからの新しいコンセプトと事業の方向を伝えてもらうことを意図している。すべての従業員が自身と誇りをもって、自分のことのようにブランドを語り、業務として具体化してもらうための重要なプログラムである。

社内ワークショップ用のテキスト(レッドファイルと呼ばれた。)

ブランドコンセプトカード

学生にもセルフィングの考え方を知ってもらうためにコンセプトカードを配布した。

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