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03ブランドとは
「バリュープロミス」である。

今回は、「ブランド」の核心ともいえる「コアプロミス」について、高級アイスクリームの「ハーゲンダッツ」の事例をお話しします。

ブランドは、すでにそこにある。

もしそこに商品や企業があり、なんらかの名前か記号がついているとすれば、ある意味では「ブランドはすでにそこにある。」といえます。

どんな商品や企業も平等にブランドをもっている。ただ違うのは、そのブランドをどのように育成し、マネジメントしていくかによって、事業の結果は大きく異なっていくということです。それでは、ブランドの何を育成し、マネジメントするのか。それは、顧客がもつ期待価値と、企業の提供価値を結ぶ「絆」です。

「絆」は、相互の「約束」と「共感」で成り立っています。その信頼関係が崩れたとき、そのブランドは崩壊していきます。したがって、常に、ブランドのターゲットとなる人々の特性やニーズと対話しながら、ブランドの価値を彼らに届ける必要があります。

「約束」と「共感」、それらを私たちは「バリュープロミス」とよんでいます。

ここに、「バリュープロミス」にこだわりつづける企業のひとつとして、「ハーゲンダッツ・ジャパン」の事例を眺めてみましょう。

「Haagen-Dazs」の理念と事業計画

高級アイスクリーム「ハーゲンダッツ」は、1961年、ポーランド移民のルーベン・マタス氏が経営するニューヨークのお店から始まります。

マタス氏のこだわりの究極のアイスクリームは、またたくまに街中で話題になり、それに目をつけたPillsbury社が買収、「Haagen-Dazs」が世界ブランドになる基礎が築かれました。

日本には、1984年、サントリーとタカナシ乳業、Pillsbury社の3社合弁事業として上陸しました。国内におけるアイスクリームの市場規模は、約3500億円。少しずつ微減しつつある市場の中で、「Haagen-Dazs」は確実にシェアを伸ばし、今や国内シェア約10%、350億円を売上げ、高級アイスクリームのシェアでは約85%を占めるまでに成長しました(ちなみに世界では、55ヶ国、650店舗の事業にまで成長しています)。

「Haagen-Dazs」の理念は、簡単で明快です。

「私たちの目的。それは、ハーゲンダッツを口にした瞬間(=ハーゲンダッツ・モーメント)を体験していただきハーゲンダッツファンをもっともっと増やすことです。」

「そのためには、完璧をめざします。品質とブランドにこだわります。」

ハーゲンダッツの事業計画は、5年ごとのフェーズによってマネジメントされています。

Phase1は、導入期として位置付け、高級百貨店と大都市のオリジナルショップ展開。

Phase2は、拡大期として、製品にバラエティをつけ、CVSとスーパーの全国展開。そして、現在、Phase3では、日本人の嗜好に合わせた新商品開発、や新しいカフェスタイルなど、新しい挑戦が始まっています。ブランド戦略は、それぞれのフェーズに対応するかたちで展開されてきました。「ブランドとは、資産である。」「ブランドづくりとは、売れ続ける仕組みをつくること。」といわれるゆえんです。

「ハーゲンダッツ・モーメント=口に入れた時の至福の瞬間」。

ハーゲンダッツの成功は、「バリュープロミス」のマネジメントにあるといっても過言ではありません。あらゆる活動が「ハーゲンダッツ・モーメント=口に入れた時の至福の瞬間」という「バリュープロミス」でアライメント(調整)され、一つのブランド実現として統合しようという試みがなされています。トップから現場のスタッフに至るまでが、「バリュープロミス」の銘記された小冊子「Haagen-Dazs Passport」を手にし、毎日反芻し、自分で考え、行動することを徹底したのでした。

「バリュープロミス」の具体化は、次の2つのレベルで実施されているようです。

1つは、メーカーとして「品質」にこだわりつづけること。素材は厳選に厳選を重ね、完璧に至るまで商品開発に時間をかけます。(ストロベリーは6年。抹茶は3年かかったそうです。)また、製造から流通、販売店まで、顧客に届けられる直前まで、厳しい温度管理がなされ、マーケットクルーが巡回しながら、美味しさの目安となる製品のきめ細かさ「アイスクリスタル」を管理します。

2つめは、ブランドがもつ「文化」へのこだわり。「ハーゲンダッツ・モーメント」を顧客に届けるための魅力ある製品揃え、チャネル揃えとオリジナル店舗づくり、顧客固定化のためのブランドコミュニケーションを展開しています。

「バリュープロミス」をマネジメントする。

ハーゲンダッツのブランド戦略は、常に企業理念を源泉としながら、段階的にそれぞれの事業フェーズに対応する形で展開されました。 Phase1の導入期では、パイントサイズ(1/8ガロン=473cc)のみで商品数では絞込み、高級百貨店というチャネルのロイヤリティを活用しながら、雑誌記事とのタイアップなどパブリシティに特化した口コミ作戦を展開します。東京は青山のオリジナルショップでは、連日、アイスクリームを買い求める人々の行列ができ、「Haagen-Dazs」は新聞やテレビ番組で紹介されました。まずは、認知と信頼を獲得することに焦点が絞られたのです。

Phase2の拡大期では、いよいよCVSやスーパーでバラエティに富んだ「カップ」と「バー」の販売を行い、そこで一気にブランド連想(イメージ)の陳腐化を防ぐコミュニケーションを展開したのでした。

Phase3の現在は、新しいカテゴリーの開発導入と同時に、会員クラブとしての「プレミアムクラブ(約8.5万人)」を設け、双方向コミュニケーションができる「ラバーズサークル(約1万人)」の運営にチカラが注がれようとしています。事業領域の拡大の一方で、ブランドロイヤリティをより一層高め、リピート顧客を増やす施策に集中しようとしているのです。これらのプロセスを眺めたとき、フェーズごとの最適解を求めながらも(パッケージデザインも改訂されつづけました。)、一貫して「バリュープロミス」の実現のために知恵が絞られ、市場や社内に「バリュープロミス」をより深く伝えようとする努力がうかがえます。

これらの粘り強い挑戦が、今日の高級アイスクリーム市場におけるシェア85%を達成しつづけることができる理由だといえます。

ブランドとは、「バリュープロミス」であり、それぞれの状況に応じた「バリュープロミス」のマネジメントが、ブランド構築を成功に導き、ひいては持続的な事業の発展につながるということがいえそうです。

Brand study

Introduction to corporate branding

  • 01 ブランドって何?
  • 02 ブランドの一生
  • 03 ブランドとは「バリュープロミス」である
  • 04 「バリュープロミス」の作り方
  • 05 コミュニケートする企業
  • 06 突き刺さるシンボル
  • 07 ブランドは「人」が作る
  • 08 ブランドの守り方、壊し方
  • 09 ブランドをマネジメントする

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今回は、「バリュープロミス」の作り方についてお話します。「バリュープロミス」の策定は料理と同じで、必要な素材、調理方法、盛り付けかた、といった要素をからめた一つの構想であり、戦略であり、デザインでもあるともいえます。「バリュープロミス」の作るための「キーポイント=レシピ」に触れてみたいと思います。

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