×

03人を動かす表現とコミュニケーション

「ブランドを壊す」

ブランディングに求められるデザイン表現は、一瞬のパターン認識によって、理解・共感を促すことである。 従来のブランディングではネーミングやシンボルロゴがもっとも重要な位置づけにあったが、情報環境が多様化し、情報が爆発するように増殖する世界では、すでにシンボルの固有性を主張することは難しくなってきている。

この場合のマーチン・リンストロームが提案する「ブランド破壊」というコンセプトは、シンボルマークからの脱却であり、いかにシンボルロゴを使わずにブランドを訴求できるかという試みである。

元来、ブランド(brand) の語源は、burned=焼印であり、マークであったが、むしろ色や写真などに特化した訴求によって、ブランドのメッセージや個性が伝わりやすくなるということがある。シンボルロゴからの脱却によって、むしろ五感を越えた訴求を可能にしていくことが出来る。

「ブランド破壊」

「ブランド破壊」

共通感覚への訴求

共通感覚とは五感を統合する感覚をいう。ブランディングにおける表現やコミュニケーションでは、意味やメッセージを明確に伝えるための理解訴求と、イメージや雰囲気を伝えるための感覚訴求の2つのバランスが重要になってくる。

それらの訴求をあらゆる知覚経験=共通感覚に訴求することがブランディングにおけるコミュニケーションでは重要であり、そのための仕掛け、戦略の創造性が求められる。

共通感覚とは?

人間の感覚能力=「共通感覚(センスス・コムンス)」とは五感と感情や記憶を総合する知覚能力である。

  • 共通感覚(sensus communis)は視覚や触覚などの諸感覚 の統合に関わる根元的な能力である。(中村雄二郎)
  • 人間とは一個の共通感官(sensorium commune)である。(メルロ=ポンティー)
  • 共通感覚を奪われた人間とは、まことに、論理的に考えることのできる動物以上のものではない。(H・アーレント)
  • 五感の形成は、現在に至るまでの全世界史の労作である。(マルクス)
  • 音楽を聞いても、いろいろの音が耳の中にはいり込んでくるだけで、何の内容も意味もないんです。(離人神経症者)

出典:「共通感覚論」 中村雄二郎 著

ブランド・ワンボイス: メッセージと経験

ブランド・ワンボイスは、ターゲットに合ったメディアで展開されるあらゆる基本要素(シンボルや写真、ステートメントなど)を、一つのボイスとして統合して表現しようとする、1990年代ニューヨークから出てきた考え方である。

ブランド・ワンボイスの考え方は、従来のVisual Identityとは違い、広告や映像媒体におけるメッセージや知覚品質まで統合していこうとの試みであり、apple社の「Think Different」キャンペーンからiMacのプロモーションまでの展開や、United Colors of Benettonの一連のメッセージ広告の成果もワンボイスとして位置づけてよいのではないだろうか。

ブランド表現の構造と「経験」の提供

ブランド表現の構造と「経験」の提供

エクスフォメーション exformation

原研哉氏(アートディレクター)が提案するコンセプトにエクスフォメーション(exformation)という概念がある。情報を正確に伝える、インフォメーション(information)するという意味の対語として発明された。エクスフォーメーションは、「知らなかった」ということに気付いてもらうようなデザインや仕掛けのことをさしている。

ブランディングにおけるコミュニケーションのあり方としては、理解に訴求するような雄弁さよりも、できるだけ何も語らず、発見を誘発するるようなエクスフォメーションという発想が重要である。

ブランドは、受け手の頭(または心)の中にある。伝えて感じてもらう以上に、自分の頭の中で再創造してもらうことによって、ブランドは強烈に人の中に浸透し、人を動かしていくのである。

無印良品というブランドは、商品そのものが無駄なものをそぎ落としたものになっており、商品やブランドそのものがエクスフォメーション化しているといえる。エクスフォメーションは、結果として共通感覚に訴えかけ、ブランドの神話性を高めることにつながっている。

新しいブランディングは、次の7つの方程式を解くことによって深められる。本書は、それぞれの事例をこの7つの視点からとらえようとしている。

  • 01 理念とアイデンティティ経営
  • 02 ポジショニングと棲み分け優位
  • 03 人を動かす表現とコミュニケーション
  • 04 製品・サービスのマーチャンダイジング
  • 05 市民参加と社会マーケティング
  • 06 事業構造とブランド体系
  • 07 インナーブランディングとマネジメント

Case study

  • 01 スカンジナビア航空
  • 02 アウディ
  • 03 ウィルクハーン
  • 04 無印良品
  • 05 デンマーク公的機関
  • 06 南チロル
  • 07 オランダ軍
  • 08 英国図書館
  • 09 アドビ
  • 10 ダンスクバンク・グループ
  • 11 ヒュンダイカード
  • 12 au
  • 13 ヒューマングループ

Scandinavian airlines

スカンジナビアらしさの本質
北欧3国が共同で運行する60年の歴史をもつ航空会社は、競争激化の中で経営難に直面。そのため、ターゲットをこれまでのビジネスマンから、ファミリー層にシフト、大々的なブランドリニューアルに踏み切った。そのコアになるコンセプトが「It’s aScandinavian.」であり、スカンジナビアらしさの本質を未来の顧客の視点から見直すことであった。それは、「もてなし」であり、「ヤコブセンの椅子」であり、「食や音楽」であり、「新鮮な水と空気」であった。

Coming Soon

スカンジナビア航空

Audi

世界トップへのブランディング・リーダーシップ
アウディは、中長期経営計画においてブランディングを重要な戦略課題として位置づけ、まずはフォルクスワーゲンとの差異化がブランドポテンシャルを高めるという仮説のもと、高級車セグメントへのリポジショニングに着手し成功。次に、自らの資源を改めて分析し世界トップを目指す。「先頭を切る」という新しいミッションのもと、きめ細かな1,000以上のプロジェクトと80ヶ国を網羅するブランドマネジメントシステムが業界のリーダーシップを生もうとしている。

Coming Soon

アウディ

Wilkhahn

商品と企業の2つの次元で新しいブランドコアを
ウィルクハーンは100年の歴史をもち、59ヶ国に展開される世界的なオフィス家具メーカーである。1980年にはウィルクハーンブームという時代を迎えるが、その後競争激化に見舞われ、他社との優位性を喪失。改めてポジショニングを商品ブランドと企業ブランドの2つの次元で見直し、新しいブランドコアとバリューを定義。すべてのタッチポイントに一貫性を与え、商品開発ではデザインコリドーといわれる固有のクライテリアとデザインガイドラインを設定し、リポジショニングに成功した。

Coming Soon

ウィルクハーン

MUJI

日本最大の流通グループの一つであった西武(西友)のストアブランドであった「無印良品」は、国内でのチェーン展開によって急激に拡大しながらも、2000年に在庫問題で経営危機に陥った。良品計画は、外部専門委員会を設置し、ブランドの根本的なところから見直し、「これでいい」というモノのある生活そのものの考え方を提案するブランドとして、商品を始め、あらゆるタッチポイントをリニューアルし、ブランドの復活に成功した。

Coming Soon

無印良品

A coherent national brand for Denmark

王冠をモチーフにした市民のための政府と公共機関
デンマーク公国は540万人の人口をもつ小さな王国であり、産業・文化面において強くて魅力溢れるユニークネスを発揮している。それらを支える、または象徴するようなブランド政策が、デンマーク政府(省庁)や公共サービス機関(鉄道や郵便、図書館や劇場)にある。それはそれぞれの組織が、王冠のモチーフを自由に活用する個性溢れる政府機関のアイデンティティ表現であり、市民による市民のための政府や公共機関の存在を示している。

Coming Soon

デンマーク公的機関

South tyrol

農産物・観光・工業製品にブランド価値を
いまや企業だけでなく、どの地域も激しい競争にさらされている。イタリア北部に位置する南チロル(ボルツアーノ自治県)は、自らの農産物・観光・工業製品に新しい南チロルというアンブレラブランドを冠すると同時に、南チロルのブランド価値を「アルプスと地中海、奔放さと確実性、自然と文明が共生する価値」と定義し、地域の様々な関係者がブランディング活動を推進するという運動へと発展させていった。その結果、市民の共感を獲得し大きな成果を生み出ている。

Coming Soon

南チロル

The Netherlands ministry of Defence

オランダ国は1995年、軍隊への徴兵制を廃止した。それまで国防を存在理由にそれぞれが道を歩んできた陸海空軍が、「世界の自由、解放、安全という共通の目的のために活動する」と自己規定を行っていった。それは歴史的な選択であった。それを契機に、軍は市民から解りやすく開かれた存在としてあるために、あらゆるタッチポイントのあり方を見直し、5万人の組織を啓蒙し、ITによるアイデンティティマネジメントシステムが構築された。

Coming Soon

オランダ軍

The British library

「クールブリタニア」という国家文化政策に基づき、大英博物館から分離された英国図書館を主軸に、いくつかの国立図書館が統合された。英国図書館は、自らを戦略的な国家の知的資源をマネジメントする機関として位置づけ、新しい21世紀の図書館像を提案。ブランディングをプラットホームに、サービス改革の実施とそれを支える内部の意識改革を展開。提供する価値を科学的に測定し自らのブランド価値の向上に努めようとしている。

Coming Soon

英国図書館

Adobe

アドビは、デザインやコミュニケーションの制作現場では欠かすことが出来ない様々なソフトを開発提供している。これらのソフトは常に18ヶ月ごとにシステムのバージョンアップが繰り返され、そのたびにビジュアル表現が変わるため、イメージの拡散とネガティブなイメージを招いていた。2003年以降、Creative Suiteの発表を機に、クリエイティブプロフェショナル層が期待する「精緻・美・願望」をコアにした製品ブランド表現の統合を実施した。

Coming Soon

アドビ

Danske bank group

生活者を支える金融のプロフェッショナル
ダンスクバンクは、3つのデンマークの銀行とノルウエイ、スウェーデンの銀行が合併してできた北欧において最も強大な銀行グループの一つである。合併にともない、店頭ではそのイメージが混乱を招いていた。グループ内の既存価値を洗い直し、それらを補うコンセプトとして「現代の北欧らしさ」、「シンプルであること」が選ばれた。街中で目立ち際立つよりも、金融のプロフェショナルとして生活者を支える黒子的な存在であることが求められた。

Coming Soon

ダンスクバンク・グループ

Hyundai card

韓国のカード市場は既に社会人一人あたり5枚所有という飽和状態にあった。どのカードも横並びで、唯一の差別化要素であった金利すらほとんど差がなかった。そこでヒュンダイカードは、利用場面や対象者に応じてサービスが異なる多様なカードマーチャンダイジングを行なった。また、経営トップの強いリーダーシップにより、イノベーションを核にした社内の意識改革と市場におけるダイナミックなブランドプロモーションを展開、シェアの拡大に成功した。

Coming Soon

ヒュンダイカード

au

日本の携帯電話市場が、NTT(元国営企業)DoCoMoとその他いくつかの新規参入企業によって分割されていた2000年の夏、国内3つの通信会社が合併しauが誕生した。当初低迷していたAuは、改めてブランドプロミスを設定し、au独自のデザインプロジェクトによる商品揃えを展開。サービス揃え、価格設定、店舗チャネルの改革も進み、ブランドへの好感度とシェアの純増率はNTT DoCoMoを大きく引き離しトップを走っている。

Coming Soon

エーユー

Human group

社会人教育・人材紹介派遣・介護ビジネスのヒューマングループは事業が多様化し急成長するなかで、グループ事業全体を統合できる自らの固有の事業ドメインの設定を必要としていた。また市場における強いアイデンティティとブランド価値を高めるために、ブランディングプロジェクトが推進していった。「成長の輪:HumanSelfing」をブランドプロミスにそれぞれのグループ企業の自主性を引き出すようなデザインシステムが導入。Selfingカウンセラープログラムも開発導入された。

Coming Soon

ヒューマングループ

Views contents

Insight

Films