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世界の自由、解放、安全という共通の目的のために

オランダ国は1995年、軍隊への徴兵制を廃止した。それまで国防を存在理由にそれぞれが道を歩んできた陸海空軍が、「世界の自由、解放、安全という共通の目的のために活動する」と自己規定を行っていった。それは歴史的な選択であった。それを契機に、軍は市民から解りやすく開かれた存在としてあるために、あらゆるタッチポイントのあり方を見直し、5万人の組織を啓蒙し、ITによるアイデンティティマネジメントシステムが構築された。

Redefining the Netherlands Ministry of Defence

オランダ国防省のシンボル

オランダの外交・国防について

オランダの外交の基本方針は、国連、EU共通外交安保政策及びNATO体制下での安全保障の推進を重視し、平和維持活動、軍備管理等で積極的な貢献を行うことである。また、開発途上国援助にも積極的で、ODA(政府開発援助)は対GNP比では世界第3位。援助額ベースでは世界第6位の援助国であり、大国と比べてもその積極性は明確である。ODAの約1割はNGOを通じて、特にアフリカ地域の援助活動に利用されている。

オランダは国内総生産(GDP)の1.6%を防衛費に充てており、2004年度の予算は約77億ユーロに及ぶ。オランダ国防省の総兵力は予備役を含まず約5万1千人、そのうち陸軍約2万2千人、海軍約1万1千人、空軍約1万1千人、王立オランダ保安隊(警察)約6千人という構成になっている。

オランダ軍の任務は、オランダ領土および連合国領土の保護、安定と、国際法秩序の維持、国内外における国内当局の法施行と災害対応、そして人道的支援の供給を担うことである。近年ではイラク南東部を管轄する英国軍指揮下の多国籍師団の下で、治安維持、人道支援、復興支援等を実施した。多くのオランダ軍兵士が他国の同士たちとともに世界中で平和活動に従事している姿は、テレビや新聞のニュースで頻繁に報道されている。

徴兵制から完全志願制へ

1997年にオランダ軍は徴兵制を停止し完全志願制に移行したが、その結果、十分な志願者の確保に苦戦することとなった。

オランダ軍は国際社会への貢献のため積極的な活動を行っていたが、その一方でそのようなオランダ軍の目的や活動を、国民が十分に理解していたわけではなかった。軍が社会のために必要であるのかという存在意義を問う議論もあがっていた。また、オランダ軍のイメージや情報は、国民に分断された形で届き、正確には伝わっていなかったという。メディアによって、軍のネガティブな情報が取り上げられる傾向が強いことも、軍が国民に正しく理解されていない一因となっていた。

完全志願制への移行を機に、このようなコミュニケーションにおける問題点が浮き彫りになっていった。国民の理解を得るため、また志願者の確保のためにも、国防省と軍の存在意義や活動の重要性を国民や世界へ伝えることが課題となったのである。

存在意義の再定義

まずオランダ国防省は自らの存在意義や目的を、改めて確認することから始めた。

安全保障と開発援助における国際的な情勢の変化により、時代を経てオランダ軍の役割も変化していた。これまでの抑止力としての国防任務だけでなく、平和維持活動や人道的援助などの積極的な活動へと役割の幅を広げていたのである。そこでオランダ国防省は全軍組織における最も重要な目的として、「平和・安全・自由」の3つを掲げた。オランダ軍は自らの任務や目的を再確認することで、自らの存在意義を再定義したのである。

組織の体系化

任務遂行時の軍は、新聞やテレビ、街中などにおいて、国内だけでなく世界中の人々の目にさらされる機会が多い。実際に活動する軍の姿は、国防省とその軍のイメージを大きく左右する。どの軍組織が世界のどこに派遣されようとも、常にオランダ軍、オランダ兵として見られている。つまり、軍内部で感じる各組織間の差異は、一般の人々には意識されず、どんな小さな単位の軍の行動であっても、オランダ軍というひとつの組織のイメージにつながっているのである。そうした意識から、オランダ国防省は人々に見られる立場であることを強く自覚し、以前までひとつの組織として統一していなかった国防省と各軍隊組織のアイデンティティの体系化をはかった。

改革

再定義された自らの存在意義を組織に浸透させ、また分割されていた軍組織の目的意識を統一すべく、オランダ国防省の全組織において横断的に様々な改革が行われていった。

このオランダ国防省のプロジェクトは、トータルアイデンティティ主導の下に進められた。シンボルロゴや宣伝活動のあり方、さらには啓蒙書による軍一人ひとりの意識改革にまで及んだ。啓蒙書は、自らのアイデンティティや存在意義について深く明記されており、オランダ軍の一員であることの自覚を促している。また、トータルアイデンティティが開発したi-Baseを利用して、コミュニケーションツールのデザインマネジメントを一貫して行っている。

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