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英国図書館

The British Library

英国図書館

国家の知的資源をマネジメントする機関として

「クールブリタニア」という国家文化政策に基づき、大英博物館から分離された英国図書館を主軸に、いくつかの国立図書館が統合された。英国図書館は、自らを戦略的な国家の知的資源をマネジメントする機関として位置づけ、新しい21世紀の図書館像を提案。ブランディングをプラットホームに、サービス改革の実施とそれを支える内部の意識改革を展開。提供する価値を科学的に測定し自らのブランド価値の向上に努めようとしている。

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英国図書館の新しいマスターロゴタイプ。図書館の存在は情報提供を支援するという常に黒子の位置にあり、ロゴマークも存在感あるシンボルという表現とは違って、常に提供される情報が主人公となるようなインデックスモチーフを採用。すべての利用者向けに、はっきりと見やすく、近代的でわかりやすい、新しいブランドデザインシステムの最重要コアエレメントである。

英国図書館の概要

英国図書館(または大英図書館)は、イギリスの国立図書館であり、1973年に大英博物館の図書館や国立中央図書館など、複数のイギリス国営図書館が統合され成立した。当初、新しい建物は作られず、蔵書は併合された各図書館に分散して所蔵されていたが、1982年にセント・パンクレスに建造された船をイメージする建物に、徐々に移された。1998年には一部の専門的な図書館 (新聞図書館など)以外をすべてこの新しい建物に集め、英国図書館として統合。

英国図書館はイギリスの国立中央図書館だが、法律で定められている納本制度により英国内で出版される出版物は、出版後1ヶ月以内に出版者によって収められることが義務付けられている。こうして納められた出版物を半永久的に保存、イギリスの全国書誌を編纂している。その他全世界から送られてくる本も合わせると一日8,000余冊にもなり、その大半は建物の地下、5層になった収蔵庫に収められている。

大英博物館にあった書庫と図書館機能は1997年に完全に移転されたが、キングズライブラリーは英国図書館新館の建物の中央にガラス張りの書庫としてそびえている。英国図書館の収蔵品は世界中の3000年分にわたる写本、稀覯本、貴重書などの書籍から切手、地図、音声テープにまでおよび、世界有数の研究図書館として不動の地位を誇っている。マグナ・カルタの手稿本、リンデスファーンの福音書、グーテンベルクの聖書、稀少なブラックペニー(切手)など、有名な収蔵品も数多くある。館内には人文、科学技術、東洋・インドの文献、世界地図など、複数の主題閲覧室が設けられている。

英国図書館のエッセンスは「世界の知識(The World’s knowledge)」と設定されている。

プロジェクトの概要

経営層、従業員など関係者全員がひとつにまとめられた目的に向かってまい進できるように、意見交換によって英国図書館のコア・プリンシプルを導き出し、それによってブランドの再構築を行った。戦略としてのブランディングを実行。政府や利用者、後援者や支援者にもアピールし、自分たちがコミュニティー、社会、国、ひいては世界においてどのように役に立ち、何を提供し、どのような価値を産出しているかを示した。目に見える実際の商品を提供しているわけではなく、サービスと図書館の活動という無形のもののブランド価値を示すのはむずかしい。利用者が図書館を利用することで得られる価値もまた無形だからだ。視覚的に示せるものはロゴやカラーシステム、タイポグラフィ……そのすべてに「わかりやすさ」と「見やすさ」を、ということでデザインにも一貫性を持たせることにした。また、こうして作り上げたものの導入に伴い、内部での意識改革を行い、いかに対外的にアピールするかまで持っていった。

プロジェクトの背景

英国図書館は1997年に完全に英国博物館から分かれたものの、それ以前から明確なアイデンティティがないままに、政府からの補助金と後援者、支援者からの寄付によって運営されてきた。財政的に何度か危機的状況に陥り、政府予算と寄付金を獲得するために自らの存在意義と価値を公に示す必要があった。また老若男女すべての利用者向けに、わかりやすい、使いやすい図書館を目指す必要もあった。

折りしも1997年の選挙で44歳のトニー・ ブレアが首相に選出されると、「クール ・ブリタニア」を国家のブランド ・イメージとし、活気のある、多様な文化や未来へのアイデアを生み出す社会をめざして文化政策を推し進めた。「クール・ブリタニア」というのは1996年にアメリカのニューズウィーク誌がロンドンを「地球上で最もクールな首都」として紹介した記事がきっかけだったものと思われる。その文化政策で、「クリエイティブ産業タスクフォース」を組成したブレア首相は国家のブランド戦略について協議、芸術文化やスポーツ界などに大規模な人的、資金的、制度的支援を行った。これに伴って、イギリスのリーディングカンパニーや海外に展開している領事館などが次々にブランディングの導入を行い、英国図書館も自ら位置づけを再構築すべく、大きな変革への道を選んだ。

まず、図書館内部、全体で、外部の専門機関からのアドバイスのもとに意見交換がなされた。全職員が参加し、それぞれがどのような仕事に就き、その使命を理解していることは確認された。しかしプロジェクトを推進していたジル・ フィニーはそれぞれの連繋がまったくできていないことに気がつき、全員が英国図書館の存在意義と価値を理解し、一致団結することを目標に1年間かけてコア・プリンシプルを導き出した。

大英博物館の中央に位置する旧ライブラリー
図書館の定義
「本や定期刊行物を公共用に、または団体のメンバーのために集めた建物もしくは部屋」とある。
21世紀の図書館のありかた
  1. 変動する情報調査の分野で、重要な役割を担う
  2. 分野を問わず、研究したいすべての人のために存在する
  3. 時間や場所を超したサービスを通じ、コレクションや専門性への容易なアクセスを可能にする
  4. 利用者のニーズを満たすために外部とも連携する

というようなことが書かれている。


新しいライブラリーはキングスライブラリーを中央にすえ、レストランや憩える空間がある

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